与太郎の奏でる音楽

出来事を文字にして白地の空間に毎日投げ込む

破茶滅茶でみっともなくて救いがないのに

東京演劇道場「DojoWIP」を見た。

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特に最後の『再生』が凄まじかった。
他の企画も面白かったけど、あのパワーと禍々しさに圧倒された。
花見の馬鹿騒ぎかと思いきや、集団自殺をしようとしている人々の10分間を繰り返す、という内容なのだが、破茶滅茶でみっともなくて救いがないのに、繰り返されることで俳優さんたちの動きの緻密さ、そして「死」に誠実に向き合っているのが伝わってきて涙が出た。

natalie.mu

1度目が終わった後にまた音楽が流れて、2度目からはこれをまた繰り返すのか……ってその衝撃に呆然としたし、繰り返す俳優さんたちがそれを1回目同様のテンションや間合いで演じようとしているのが(敢えて「演じようとしている」と書いたのはどうしても生きている人間が激しく体を動かせば死んだ動作をしても「呼吸」が漏れてしまうから、でも、だからこそ「生きている人たちがメッセージを持って演じている」という証でもある)、何度も見るうちに、これから死のうとしている人たち一人一人が何故この決断をするに至ったのかという過去に思いを馳せるようになって、それを掴むヒントがあの場での立ち振る舞いや衣装なんだなと感じた。
集団自殺をしようとしていて毒薬を飲み、あと数分の人たちの中にも「何でもありでもそれはやっちゃいけない」や「とりあえずみんなに合わせて笑っておこう」という『社会』が生まれていた。
その線引きが登場人物たちそれぞれにあって、人物の背景は一切描かれないのにそれが匂い立つ瞬間が何度もあった。
繰り返しが行われてからは、1回目に見ていた人とは違う人物を目で追うようなり、自分なりに視点をスイッチングしていることに気づいた。
そのことにより奥にいる人物の表情や動きがわかるようになり、笑っているのに時折立ち止まり顔を強張らせているのが見えたりしてそれがまた痛ましかった。

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事前に俳優さんや運営側がSNS集団自殺の内容であることを書いてくれたおかげで覚悟を持って見られた。

自殺も、戦争で虐殺される姿も、全部包み隠さず動画で広まる時代で(作中でも動画を回している人物がいる)、しかもそれが下手したら子供にもアクセスできてしまうほどで、その中でこの内容をやるって色んな覚悟が必要じゃないかと感じる。

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26日まで池袋の東京芸術劇場で見られるのでぜひ。