与太郎の奏でる音楽

出来事を文字にして白地の空間に毎日投げ込む

私はセーフなのか

雨の日以外は走っている。かれこれ1年以上続いている。
体型や体力の面などでの変化はこれといって感じない。
じゃあなんで続けているんだと問われれば習慣になってしまったから、としか言いようがない。
ただ悩みの種だった腰痛は少し軽減されている気がする。それだけで御の字だ。
だけどたまに会う人に「痩せた」と言われたり、逆に「でかくなった」と言われたりするようになった。どっちなんだ。
きっとその人それぞれの私のイメージがあってそのイメージから何かしらの形で変わっているのだろう。
走っていると色んなものや人と出会う。
落とし物の靴の片方がガードレールに引っ掛けられていたり、割れたメガネが木にくくりつけられていたり、つい最近まで無地だった壁にスプレーで『FREE GAZA』と描かれていたり、写実的な猫の顔がプリントアウトされた鞄が電柱にひっかかっていて、一瞬化け物が出たかと思って本気で驚いたこともあった。
春の陽気に当てられふわふわとした気持ちで走っていると、なぜか缶コーヒー片手に中腰で、周囲をきょろきょろと見ながら忍者の様に走っていく野球帽を被った中年とすれ違ったこともあった。誰にも見つかりたくないのだろうか。中年と一瞬目があったが、「見つかった!」というリアクションというよりも「あっ、こいつなら別にいいか」という感じで小走りで通り過ぎて行った。私はセーフなのか。
歩道橋が好きで、歩道橋がある街道を走るようにしている。
好きな歩道橋を渡り、いつもの道を走ろうと思ったら人が倒れていたことがあった。
通報した方がいいのか、と思ったが隣に倒れている人と近い年代の人が電話をかけていた。知り合いなのだろうか。この人に任せちゃっていいのだろうかと考える。狭い道だったのでひとまず通り過ぎて少し距離をとってから振り返ったら倒れていた人は何事もなく立って歩いており、連れ合いの人が肩を寄せ合っていた。数秒前まで倒れていたことがなかったかのように仲睦まじく歩いていて幻覚でも見たのかと思った。無事だったならいいんだけどまじでなんなんだよ。
ちなみにその倒れていた人はどこか見覚えがあり、誰だっけなあと思いながらSNSを見ていたら当人の顔写真が出てきてびっくりした。時折行く酒場の店主さんだった。
割と落ち着いた感じ接客をされる方だったので、路上で寝転ぶような突拍子もなさを持ち合わせていることにちょっとびっくりした。
日々の仕事のストレスなのか、ただ朝まで飲んで酔っていたのか。
春という季節がそうさせたのだろうか。